TravisMathew トラヴィスマシュー

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2021.01.17

-Interview- 「昨日良かった1センチが今日はダメと感じることもあります」

いかに日本人の体型に合うものをつくりながら、ブランドのコンセプトをしっかりと製品に反映させていくか。トラヴィスマシューのジャパンモデルに課せられる、いちばんの命題だ。シルエットや着心地のカギを握っているのは、パタンナーの西岡吉紀。自らの仕事への思いや、製作の裏側を伺った。

 

 

「頭のなかで3Dで考えながら、2Dの線を引く」

 

トラヴィスマシューはアメリカのブランドだが、日本で展開するパンツのほとんどは日本で企画されたものとなっている。欧米人とは骨盤の角度などに違いがあるため、アメリカの製品が日本人にうまくフィットしないからだ。ただ、だからといって、日本側で自由につくっているわけではもちろんない。「日本人が着たときにトラヴィスマシューの雰囲気が出るようにするには、どういうサイズ感、どういう丈でつくればいいかということを、絵の段階でデザイナーと話し、サンプルが上がってきてからも、ああでもないこうでもないと何回も修正しながら完成に近づけていきます。難しい作業と思われるかもしれませんが、それが楽しい仕事でもあります」

 

 

こう語るのが、日本企画のパタンナーを務める西岡吉紀だ。服は、生地の複数のパーツが組み合わされて完成する。パーツのつくられ方によって、全体のシルエットや着心地も大きく変わることになる。パタンナーは、そのパーツの型紙(パターン)を考え出す仕事。デザイナーに勝るとも劣らないほどに、服の出来を左右する役割だ。「こことここを縫っていったら、立体、3Dでどんな見え方になるかというのを考えながら、平面、2Dの型紙の線を引くというのがパタンナーの仕事です。頭のなかでは、3Dで考えています。ここを1センチ削ったら、こうなるんだといった具合に」西岡は、これまで数々の有名ブランド、アパレル会社で経験を積んできたベテラン。それでもパタンナーの仕事は、「やっぱり難しい」そうだ。「20年近くになりますが、もちろん、いまも悩むときは悩みます。トレンドや時代の空気を読んで、どうつくっていくかが大事だと思っていて、しかも、パターンは1年後とか、先のことを考えてつくるもの。昨日は良かったその1センチや線が、今日はダメと感じることも多いんです。実際、商品が出たときに、こうしておけば良かったと思うこともありますし」

 

「変にこだわると、おもしろくなくなるんです」

 

“もっとこうしたほうがいいのに”といった、デザイナーやデザインとの衝突、葛藤も、想像に難くない。しかし、現在の西岡の胸の内は、「デザイナーへのリスペクトの気持ち」で大きく占められている。1年だけだが、デザイナーになった過去が西岡にはあるからだ。「アシスタントでしたが、僕のなかの『洋服のこういうところが好き』という部分が、デザイナーという職種と合っていないことを痛感しましたし、いかにデザインが難しいかということも思い知りました。それで、パタンナーに戻りました。いまは、デザイナーの頭のなかをどうやって覗こうかと考えるようになりました。『この人はこういう服が好きだから、この人が描いたこの線は、こういう感じの雰囲気を出せばOKが出るのかな』というふうに。それがすごく楽しいですし、パタンナーという仕事のおもしろい部分だと思うんです」

 

素材との付き合い方も似ている。西岡は、「生地それぞれの特徴で、パターンを考えるようにしている」という。「たとえばストレッチの素材に対して、『パターンの引き方次第で同じような運動量は出せる』といった思いは、全然ないです。そこは共存していくところだと思っていますから。動きを考えるとき、生地が伸びてくれれば、その分を確保してくれるわけじゃないですか」

デザイン、素材など、すべてを受け入れたうえで、ベストな線を追求する。一見、受け身に感じるかもしれないが、じつはとても貪欲だ。「変に何かにこだわると、逆に僕はおもしろくなくなるんですよね。こだわらずに考え、合わせていくことで、自分も成長できると思いますし、何かにこだわりすぎると逆に先に進めなくなっちゃうんです。いろんな人の意見を聞き、それを吸収していくことが、次につくる洋服に生かされていくのかなと」

 


ここまで話を聞いてくると、冒頭のコメントもじつに西岡らしいものであることに気づく。「日本人が着たときにトラヴィスマシューの雰囲気が出るように」することに腐心しているとのことだったが、その「雰囲気」をどのように捉えているのだろうか。「僕はゴルフというスポーツを、大自然のなかでプレーする、すごく非日常的で特別なものと常に思ってきました。しかしトラヴィスマシューは、ライフスタイルのなかに、自然にゴルフがあることをすごく感じさせてくれます。友人と食事にいったり、恋人とショッピングにいったりするような、すごく日常的なものだと。だからこそ、リラックスした感じで、わざわざかしこまることもなく、少し力を抜いた感じで着てもらいたいと思っています。朝に着るものをチョイスしたら、それでゴルフに行って、サーフィンにも行って、食事もして、その1日を過ごす。まさに、そんな感じなのかなと」

 

 

 

  • 西岡吉紀 Yoshiki Nishioka

    1980年奈良県生まれ。大学在学中に並行してファッションの専門学校に通い、大学卒業後、パタンナーに。現在はフリーランスとして、トラヴィスマシューをはじめ、さまざまなブランドのパターン製作に携わる。